みなさんこんにちは。音楽事業プロデューサーの木村です。
最近ユーザーサポート宛に、「音楽を使用したいけれど申請方法がわからない」というお困りの声をいただくことが多くなってきました。今日は複雑だといわれる音楽著作権について、音楽業界の話などを交えて記事を書いていきます。
音楽著作権と音楽著作権管理会社について
皆様が音楽を利用する時、「勝手に使ってはいけない」という認識は少なからずお持ちだと思います。どの楽曲にも、作った人=作詞・作曲・編曲や、音楽を広める役割を持つ人が存在することを認識いただくことで利用申請への考え方も変わってくるはずです。
『音楽著作権利用申請』は少し複雑であるがゆえ、利用者が諦めてしまう場合も多くみられます。複雑化するのには理由がありますので著作権の説明をしながら解説していきます。
著作権とは
作詞・作曲家(著作者)が音楽を創作すると「著作権」という知的財産権を持つことになります。複製権や演奏権など細かく分類され、著作物を創作した時点から死後70年間守られるもので、譲渡が可能な権利です。著作者はその他にも「著作人格権」という音楽そのものを守る権利だけではでなく、人格や名誉に関わる部分を保護する権利を持っているのですが、著作人格権は譲渡が出来ません。
著作者が作った音楽は、誰かが歌ったり演奏したり、レコード会社がそれを録音し原盤(音源)を制作した後、CDや配信音源などにしますが、原盤を作ったり広める役割の方々にも「著作隣接権(原盤権)」と呼ばれる権利が与えられます。
ひとことで、「音楽著作権」といっても、このように複数の権利が集合して形成されているものなのです。
殆どの著作者は、自身の作品が利用された際、然るべき利用料を受け取る事が出来るよう、音楽著作権管理会社に作品登録をし管理を委ねています。登録の際に「作品の利用範囲」を決定します。例えば「演奏するのは許諾するけれど、カラオケで歌われるのは嫌だ」というようにあらかじめ設定された項目の中から自由に選択し、それを元に音楽著作権管理会社は利用者に申請を提出し許諾・利用料徴収を行います。
音楽著作権管理会社とは
皆さんが聞いたことのある「日本音楽著作権協会(JASRAC)」や「著作権管理団体(NexTone)」がそれにあたります。
著作権を持っている人(作詞家、作曲家、音楽出版社など)から委託を受けて、著作物の利用許諾と使用料の徴収などを行い、著作者に分配する手続きの窓口をしています。
音楽業界の相互関係が影響か?利用申請が複雑化する理由
1つの例え話から、「音楽」がどのように生まれ、どんな人たちが関わっているかを簡単に説明します。これを知ればどうして複雑になってしまうかがわかります。
音楽業界のことがわかる話
登場人物&企業
・アーティストA(芸能事務所Big Office所属のアーティスト)
・ Big Office(マネージメント芸能事務所)
・プロデューサーC(超有名プロデューサー)
・作曲家D(SNSで話題の作曲家)
・Eミュージック(レコード会社)
・Fantastic(Aさんのデビュー曲)
・Greatレコード(全国展開のレコードSHOP)
・Heat東京(イベントスペース)
・Intelligence出版(音楽出版社)
・JAPANシャワー(イベント制作会社)
・K-チケット(チケット販売会社)
アーティストのAさんという女性がいます。彼女は類まれなる歌唱力と魅力的な容姿を見いだされ、マネージメント会社(芸能事務所)「Big Office」に所属する運びとなりました。Big Officeは、1万人に1人の逸材Aさんの魅力をより多くの人に伝えたいと思い様々な戦略をたてます。
まず初めに、長年つきあいのある「Eミュージック」に相談をし、超有名プロデューサー「C」さんと、今SNSで売れっ子の作曲家「D」さんを口説き、Aさんのデビュー曲音源「Fantastic」を制作することにしました。著名人を起用すれば注目度が上がるからです。Aさんは歌うだけでなく素敵な歌詞を書く才能があったので、今回作詞を担当することになりました。
無事レコーディングを終え、楽曲「Fantastic」ができあがりました。想像以上のクオリティーの高さとキャッチ―なメロディー。胸にこみあげる歌詞。圧倒的な歌声。「これは絶対に売れる!」そう確信したEミュージックは新人には珍しい1万枚のCDをプレスして全国のCDショップ「Greatレコード」に卸したり、大手配信サイトに提供して、お客さんが店頭やネットでも「Fantastic」が買えるようにします。またラジオやTVなどでも大々的に宣伝CMを出しプロモーションを行いました。
Eミュージックは先々のことを考慮し、作曲家「D」さんと、Aさんに著作権を譲渡してもらました。そして、音楽出版社「Intelligence出版」を通じ、音楽著作権管理会社(JASRAC/NexTone)に「Fantastic」の作品登録し管理をお願いすることにしました。
大々的なプロモーションの反響か、なんとCD売上が初回8,000枚、「Fantastic」は配信ランキングでもTOP10に入りました。Big Officeは急遽ファンクラブを設立し、同時に「Heat東京」という2,000人規模のイベントスペースでAさんのCD発売記念ライブを行うことにしました。バンドメンバーはEミュージック所属アーティストとCさんが参加することが決定。
大手イベント制作会社「JAPANシャワー」に制作を相談することにしました。CDの売れ行きやファンの反響の大きさをすでに知っていたJAPANシャワーは、自身の媒体で当日のリアルタイム配信の提案をしてきました。さらに動員をあおるため、協賛している全国放送の音楽番組に出演することが決まります。大手Kチケットにも販売依頼をし、全国のお客さんがチケットを買いやすいように話を進めます。
以降は、Big Office、Eミュージック、JAPANシャワーがタッグを組んで告知用MVを準備したり、ライブ当日には映像を撮影し秋にはDVD化して販売することを企画するなど今後の展開を加速化していきます。
このように「Fantastic」が世の中に認知されるまでには、アーティストや作曲家、音楽出版社、音楽著作権管理会社、レコード会社など多くの分野の方々が関わっています。音楽業界は独立しているようで、細かく役割と責任を分担しあっています。
申請が複雑だという理由
では実際にこんなに関係者が多い「Fantastic」のような音楽を、あなたが「動画やイベントで使いたい!」場合、どこに利用許諾を申請するのが正解でしょうか?
実は「使用目的」によって異なるので、以下をご覧ください。
YouTubeやTikTokなどの動画で「原盤」を使いたい場合
この場合どこに確認をしたらいいと思いますか?
①作詞作曲家が著作権を委託管理しているIntelligence出版に聞く。
②音源を作ったレコード会社Eミュージックに聞く。
③音楽著作権管理をしているJASRACなどに聞く。
答え:基本的には、YouTubeやTikTokは音楽著作権管理事業者と「包括契約」を結んでいますから、 ③音楽著作権会社(JASRAC)と思われるかもしれませんが、『原盤』を使いたい場合は、CDを作った人(Eミュージック)の「著作隣接権」に該当するため③ではなく②が正解です。
入場料がある野外広場イベントでバンドで演奏をする場合
こういった場合はどこに確認したらいいと思いますか?
①作詞作曲家が著作権を委託管理しているIntelligence出版に聞く。
②音源を作ったレコード会社Eミュージックに聞く。
③音楽著作権管理をしているJASRACなどに聞く。
答え:野外であっても有料イベントだし、「確認先は③のJASRACだと」考える方が多いのですが、実は③だけでは申請が不十分な場合があります。もしアーティストAさんと作曲家Dさんが、「演奏」の利用分野を許諾していない場合は、①の作詞作曲者まで確認が必要になりますので、③以外に①のIntelligence出版にも連絡し許諾を得ることになります。
このように1つの音源でも、使用目的に以下のような項目があると、確認先が変わるったり複数への確認の必要がでてきたりします。
・著作者自身が許諾をしていない利用範囲に該当
・イベントが有料または金銭の授受がある
・広告の有無
・配信の形態
・国内・海外音源
その他
「利用申請は全て音楽著作権団体に申請すればいい」だけではすまなくなるので注意が必要です。
サポートサービスをうまく活用しましょう
もちろん個人で自力でなんとか調べて申請する方もいらっしゃいますが、ネットで得た情報が正しいとは言い切れません。
自己判断では危ういケースもありますので、お困りの時はぜひ専門知識をもった人にご相談いただきたいところです。
皆さんのお悩みをお手伝いしたいという思いから、この度「ミュージックアプライ」というサービスを立ち上げました。経験のある専門スタッフがマンツーマンで申請のお手伝いをしていきますので、ご興味がある方はぜひこちら(ミュージックアプライHP)をご一読いただけたらと思います。
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